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日々平安

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日々、平安であれかしと願いつつ・・・。※出会い系・営業系のコメントは削除させていただきます。悪しからずご了承ください。禁・無断転載。

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記憶の絵

ルーティンワークが嫌いだった。
いまも好きとは言えない。

本が大好きで中学も高校も図書委員だった。
10数年間書店に勤務していたこともある。
だが、本は好きでも仕事となれば、ほぼ同じことの繰り返しなわけで
ちまちまとした単純作業や、紙の仕事(笑)を延々と・・・という日もあり
そのたびにうんざりしたものだった。

日々の暮らしも、時には波風が立ったり、心踊ることがあっても
概ね平穏無事に同じようなことの繰り返しで過ぎていく。
・・・いまの私は、日常に大感動巨編のようなドラマはいらないと
ちょっとしたことが嬉しく、ありがたいと感じられるのは
とても幸せなことだと思っている。

当たり前と思っていたのは当たり前ではなかった
なんでもないことは、実は幸せなことだったのだと
思い知らされたあの日々に、毎晩読んでいたのはミス・リードの
フェアエーカーシリーズだった。

たまたまか、それとも私がそれを求めたものか・・・
ここ数日にわたって読んでいたのもミス・リードだった。
おなじみフェアエーカーシリーズのエミリー先生と
スラッシュグリーンシリーズのスラッシュグリーンからの風。
どちらも買おうと思っているうちに絶版になってしまっていたが
運の良いことに、新古書本として出ていたものが手に入った。

私はイギリスに行ったことがない。
イギリスどころか日本から出たことがないので、外国の暮らしについては
小説や映画、テレビドラマから得た知識のみ・・・それだけ。

なのに、アガサ・クリスティのセントメアリミード村もそうだが
フェアエーカーやスラッシュグリーンでの人々の暮らしが
すべてではないが腑に落ちて、かつ懐かしく感じられるのは
私の子供時代が昭和40年代の田舎だったからだろうと思う。

実家は兼業農家で稲作が主だったが畑もあった。
それはまだ耕地の区画整理がある前の、家からは少し離れた場所で
いまの畑より少し広かった気がする。
区画整理があったのはもう40年近くも前のことなのに、畑というとその畑と
そこで立ち働く両親の姿が浮かんでくる。

助産師だった大叔母は、村の民生委員もしていたから
家で療養していた病人や、一人暮らしの老人世帯を訪ねていたが
まだ幼稚園に入る前の私もよく連れられて行ったものだった。

いまなら、小さい子供を病人のところへ連れて行くなどご法度だろうが
私はおとなしくて行儀の良い子供だったので(ウソじゃないです・笑)
お年寄りの受けもよく、子供好きの人も多いから喜ばれていたらしい。
当然ながら自分ではあまり覚えていない。

長いこと床に伏していたらしかった小母さんの、枕元で遊んでいた私を見る
その人の目がやさしかったこと。
大叔母と親しくしていた老婦人と私と、3人で火鉢を囲んで
老婦人宅の茶の間でお茶を飲んでいたこと。
その老婦人は厳しい人と言われていたが、記憶にあるのは笑顔とやさしい声音だけ。
それらはもう、本当に記憶の海の底の底に沈んでいるような状態だから
おぼろげに、時々ゆらゆらと現れて漂うだけだ。

私の子供時代の村の暮らしも、フェアエーカーもスラッシュグリーンも
いいことばかりであったわけではない。
人々の暮らしの中には悲しみ苦しみも、妬み嫉みもちりばめられていたはずだ。

大人になった私は・・・老いの世界に踏み出し始めた私の頭の中からは
小さいころの自分や周りの大人達の悲しみ苦しみは、もう消えかけている。
記憶の海に沈んでいるというよりも、ほぼ削除されたようなものかもしれない。

忘却とは忘れ去ることなり・・・というあのナレーションが浮かんできた。

誰でも思い出したくないことは、ひとつやふたつみっつはあるだろうから
忘れてしまったほうが幸せな場合もある。
そう考えると、記憶力が怪しくなっていくのもそう悪いことではない気がする。

それと。
忘れているようで、いや忘れていたとしても残る思いのようなもの。
人のやさしさや思いやりの心、嬉しさや楽しさ・・・
具体的なあれこれは忘れても、確かにどこかに残るあたたかな記憶。
それらは私たちの、生きる力のひとつになっているに違いない。
Commented by liligohan at 2014-03-13 10:26
幼い頃の記憶の中に出てくる登場人物の大半より
今の自分のほうが年長になってしまい
なんて頼りない大人だろう、と…
昔の人の方が絶対偉い(笑)。
Commented by mitzi156 at 2014-03-13 12:14
本当にねえ・・・
40年前の両親は30代だったし、大叔母は・・・大叔母は
・・・今の私とほぼ同年∑(゚д゚lll)
昔の人のほうが偉い。絶対偉いよっ(笑)
Commented by tuguki2964 at 2014-03-13 13:53
昭和も40年代と50年代じゃ全然違うよね。
40年代はまだまだ貧しかったし 〝もはや戦後とは言えない!” なんて言わなきゃならないほどに 〝戦後” の残骸がいたるところに残っていたけど、でも、ご近所づきあいは親密で、まるで4コマ漫画のサザエさんのようだったような気がします。
あのころ、かっぽう着に姉さん被りで 〝餡まん蒸かしたから~~!” とか 〝たくあんがおいしく漬かったのよ~~!” なんて、おすそ分けしてくれていたおばあちゃんたちって、きっと、今の私の年代に違いない。
あ~~~っ、本当に...。
こんなに、うすっぺらに年を取ってごめんなさい。
Commented by mitzi156 at 2014-03-13 20:33
つぐさん♪
ああ・・・たしかに ! 40年代と50年代じゃ、全然違う。
40年代半ばの、あの万博辺りから急速に変わり始めた・・・かな ?
カラーテレビがパーッと普及しだしたのもたしかその辺。
カラーテレビに手が届くほど、ゆとりが出てきたんでしょうね。
そうそう、サザエさん !
サザエさんを見ていて、あの中の人々の暮らしをさらりと
普通に受け止められるって40歳以上かもしれないよね・・・
いまの若い子は黒電話も知らないかもしれないし
都会の住宅地の空き地で野球したりなんて・・・ねー(笑)

そう・・・なんですよ・・・
私、大叔母のこと「◯◯ばあちゃん」なんて呼んでいたけど
ヘタすりゃ、いまの私より年下_| ̄|○ il||li
うん。もうホント、ごめんなさいって感じ(-_-;)
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by mitzi156 | 2014-03-13 08:30 | 本・コミック | Comments(4)